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執筆者の写真昌俊 和田

オリジナル脚本『明日の気持ち』第一稿

更新日:7月24日

『明日の気持ち』という作品について


噛み合わないコミュニケーションについて書きました。お互いに相手と向き合わなければコミュニケーションはうまくいきません


インターネットの発達にともなって、リアルな現実でのコミュニケーションに苦手意識を持つ人が多くなったように思います


文字ベースではない、リアルな会話によるコミュニケーションの場合は、リアルタイムで相手も一歩を踏み出さなければコミュニケーションが始まりません


自分のペースを守ることに慣れていると、お互いの関係性が進んでいかないということを描いています


タイトルの『明日の気持ち』は決断を先送りにしてしまうことを表現しています


コミュニケーションの難しさについて考えるためこの脚本を書きました



『明日の気持ち』


作・和田昌俊



メインキャスト2名



渡辺大和(わたなべ やまと)

ハゲデブ中年童貞。童貞を捨てたくて彼女を作ろうと必死になっている

現実逃避するため公園でぼんやりしていたところ、隣のベンチに座っていた女性に恋をする

女性が逃げずに話をきいてくれたことがうれしくて、それ以来よく公園を訪れるようになる


鈴木陽奈(すずき ひな)

無口な美人女性。読書が趣味で、お気に入りの公園のベンチで本を読んでいる。コミュニケーションが苦手で人とあまり話さない

愛読書は『蝿の王』

いつもイヤホンで音楽を聴いている



※本作において身体的接触はありません。セリフにセクシュアルな表現はありません。肌の露出はありません。暴力的表現はありません。喫煙・飲酒シーンはありません


ワンシーンのみ



【シーン1】昼間〜夕方の公園のベンチ




鈴木が公園のベンチで本を読んでいる


片手で髪の毛をかきあげると、イヤホンをしている


渡辺がやってきて鈴木を見つける


渡辺「ここ、座っていいですか?」


渡辺は鈴木のとなりのベンチを指さしてきく


鈴木はわずかに首を下げる


渡辺はOKだと思い込み、嬉しそうに隣に座る


渡辺「よく会いますよね。あっ髪型変えたんですね、前より少しこうふわっとしましたよね」


鈴木は読書に疲れた様子で、本から顔を上げて首を動かす


渡辺「あ、えっとぼく、渡辺大和って言います。毎回名乗ってるんで、もう覚えちゃいましたよね。おまえ、なんかい自己紹介するんだよっていう」


渡辺は恥ずかしいのか、鈴木のほうを見れないでいる


渡辺「ぼくも、よくこの公園くるんですよ。今日はだれかと待ち合わせとかですか?それまでしゃべっててもいいですかね」


鈴木は疲れた様子で少し顔を上げて公園の景色を見たあと、また本へ目線を落とす


渡辺「ぼくけっこう空気読めないんで、女の人としゃべるの苦手なんですけど、あなたといると、なんか話しやすいっていうか・・・あっイヤだったら言ってくださいね」


渡辺は鼻をヒクヒクさせる


渡辺「なんかいい匂いしますね、柔軟剤なに使ってるんですか?あっちょっと今の発言はキモかったですよね、すいません」


鈴木は軽く顎を引いてページの最後まで読むと本のページをめくる


渡辺「ぼく女の人とこんなにしゃべれたのはじめてだなあ。おうちってこの近所なんですか?あっ個人情報ですよね、すいません。ぼくの話って退屈じゃないですか?」


鈴木は次のページへと読み進め、顔を右から左へ動かす


渡辺「違う?大丈夫ですか?ああよかった」


渡辺はその反応を良い方に解釈して話し続ける


渡辺「今日は何読んでるんですか?ああ、その本ぼくも読みましたよ。いいですよねえ。主人公の葛藤が時代背景に照らし合わされて深く描かれていて、すごいなぁって思いましたよ」


鈴木は無反応のまま読書を続ける


渡辺「・・・本、お好きなんですね。今度一緒に図書館行きませんか?なんて、言ってみたり、とか、あっまだ早いですよね、付き合ってるわけでもないのに、なんかナンパみたいなことしちゃってすいません」


鈴木は軽く顎を引いてページの最後まで読むと本のページをめくる


渡辺はしばらく無言でモジモジしている


なにかを決意したように渡辺は鈴木のほうを向く


渡辺「あの、いまって付き合ってる人とかいたりしますか?良かったらもっと仲良くなりたいなあ、なんて思ったりしてるんですけど」


鈴木はしばらく無言で本を見つめたあと、腕時計をチラッと見て本を閉じる


鈴木は無言で立ち上がって去っていく


渡辺はその様子を見ながら


渡辺「あっ、明日もここで待ってますから。返事は今すぐでなくても大丈夫なんで」


歩いていく鈴木を見送りながら渡辺はつぶやく


渡辺「・・・無口な人だなあ」



暗転



タイトル



エンディング



エンディング終わり


暗転する直前の鈴木が映る


鈴木の歩いている姿、遠くに渡辺が映っている


左耳のイヤホンを外してカバンにしまいながら歩く鈴木


右手で髪の毛をかきあげると、イヤホンをしていない右耳が映る


歩きながら、少しうれしそうにつぶやく鈴木


鈴木「また明日も、お話しできるといいなあ」



END








無断転載・無断使用禁止

 

この脚本を使用する場合、必ずご一報ください

 

ご連絡はTwitterDMまたは「劇団ぎょう座」のメールまでどうぞ

和田昌俊 Twitter

劇団ぎょう座 メール

短編映画『明日の気持ち』劇団ぎょう座【第三作】


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