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執筆者の写真昌俊 和田

オリジナル脚本『女装アイドルの悩み』

更新日:7月24日

『女装アイドルの悩み』という作品について


虚像というのがテーマです。アイドルという存在は虚像の象徴だと思います。人はイメージだけで物事を判断しがちです。とくに言葉のイメージは強力で、「清純」というイメージがつくだけでウソつきという想像をしません


虚像に騙される滑稽さを描いています


女装アイドルにしたのはその存在自体に登場人物が疑問を持っている、という設定にするためです


彼は男として売り出したいのですが、女装アイドルという虚像として売り出されてしまいます。清純派アイドルの彼女もまた、じつはだれかに作られたイメージかもしれません


虚像や無知につけこまれて、いいように踊らされてしまっていないかと疑問に思います


だれかに作られたイメージによって、人は簡単に騙されてしまうという恐怖を描こうとこの脚本を書きました



『女装アイドルの悩み』第一稿


作・和田昌俊


登場人物2名メインキャスト


和田昌俊(わだ まさとし)

ハゲデブ中年童貞の女装アイドル。芸名MASA。売れない俳優だったところを、サヤカの所属事務所の敏腕マネージャーに汚れ専門の女装アイドルとしてデビューさせられた。本人は何度もアイドルを辞めたいと思っているが、サヤカにはげまされてなんとなく続けている。女装アイドルを長く続けたせいで口調が変わったことに本人は気づいていない


サヤカ

清純派アイドルとしてデビューしたカワイイ女性。同じ事務所のMASAのことを気にかけている。MASAがアイドルを辞めたいと言い出すたびに、MASAの部屋にきてはげます。最近、交際していた歳上の男性にフラれてショックを受けている。プライベートでは肌の露出をしない。ノートが好き



※本作において身体的接触はありません。セリフにセクシュアルな表現が少しあります。肌の露出はありません。暴力的表現はありません。喫煙・飲酒シーンはありません



ワンシーンのみ



【シーン1】  MASAの部屋



MASAが机に突っ伏してうなだれている


サヤカはMASAのことを心配そうに見ている


サヤカ「アイドル辞めるって本当なの?」

MASA「もう無理なの」

サヤカ「なんで?あんなに楽しそうに活動してたじゃん」

MASA「もう疲れちゃったの」

サヤカ「ちょっとくらい批判的なコメント書かれたくらいで落ち込んじゃダメだよ」

MASA「もういいの」

サヤカ「太ったこと気にしてるの?だれもわかんないよ」

MASA「そうじゃないの」

サヤカ「じゃあなに?きゅうに死にたいとか電話してきてさ。どうしちゃったの?」

MASA「アタシ、もう女装アイドルするの嫌なの。本当は男で売り出したいの」

サヤカ「またそれ言う?もう何度めよこの会話。事務所の方針で女装アイドルで売りだすことになったんじゃん。売れない俳優だったのがなんとかここまでこれたのは、女装アイドルだからでしょ」

MASA「やっぱり、アタシ、俳優がやりたい。今度は本気なの。もう女装アイドルなんて辞めてやるんだから」

カツラをとるMASA

サヤカ「でもせっかくここまできたんだし、ファンの人もできてさ、これからってときじゃん」

MASA「サヤカはいいわよね」

サヤカ「なにが?」

MASA「清純派アイドル」

サヤカ「私だって悩みくらいあるよ」

MASA「歳上の男にフラれたくらいでメソメソしちゃってさ。いい仕事はみーんなあんた、アタシは汚れ仕事専門。この前なんかゴキブリを鼻からー」

サヤカ「なにが言いたいの?」

MASA「うらやましいの」

サヤカ「なにも知らないくせに」

MASA「どうせ枕営業とかでしょ。アタシなんてもう、最近じゃあこれなしでやってらんなくなっちゃった」

そう言って白い粒を口に放り込むMASA

サヤカ「それ、なんの薬?」

MASA「ん?ラムネ」

サヤカ「わたしね、アイドル辞めることにした」

MASA「どうせ休業して、女優になりますってパターンでしょ」

サヤカ「芸能界も辞める」

MASA「いったいどうしちゃったの?」

サヤカ「わたしね、妊娠したみたい」

MASA「えっ?妊娠?相手はだれ?」

サヤカ「この前出演した映画の監督」

MASA「えっあのハゲのドスケベ?」

サヤカ「そう」

MASA「ちょっとちょっと、やばいんじゃないの」

サヤカ「いいの。私、だれにも言わないで一人でこの子を育てようと思う」

MASA「どうしちゃったの?」

サヤカ「私、潮時かなあって思ってさ。この子の妊娠がわかった時、気づいたの。本当に自分が夢中になれるものはこれだって」

MASA「本心じゃないでしょ、それ。アタシ、わかるの。こういう勘って当たるの」

サヤカ「ほら、見て」

サヤカは体温計のような形状のスティックを見せる

サヤカ「ここに線があるでしょ?妊娠してるってことなの」

MASA「そうなんだ。じゃあ本当なんだね、おめでとう、でいいのかな」

サヤカ「ありがとう」

MASA「なんかびっくり」

サヤカ「だからね、アイドル辞めないでほしいの。私のぶんまであきらめないで欲しい」

MASA「今回は本気で辞めようと思ったんだけどな」

サヤカ「MASAは俳優じゃなくって、こっちがお似合い」

そう言ってサヤカはカツラを被せる

サヤカ「ほら、笑って」

涙目のサヤカ

MASA「うまく笑えないよ」

MASAはもらい泣きしている

サヤカ「お腹の子が落ち着くまで実家に帰ってるけど、心はいつもそばにいるから」

MASA「きっと、またすぐに会えるよね」

サヤカ「うん、すぐに会えるよ」

MASA「がんばってね。妊娠出産ってアタシにはできないことだから」

サヤカ「がんばってね。女装アイドルって私にはできないことだから」

二人は笑顔になる

サヤカ「やっと笑えたね」

MASA「アタシ、アイドルだから」


暗転


エンディング



エンディング後


妊娠検査薬のスティックが画面に映る


二つ目の窓には線が入っていない


サヤカは無造作にスティックをゴミ箱に捨てる


ノートを取り出して[妊娠検査薬]という項目に線を引くサヤカ


その上には[母親の病気][地球の危機]と書かれた項目に線が引かれている


サヤカ「ちょろいなあ。あいつ、本当にだまされやすいんだから」



END







無断転載・無断使用禁止

 

この脚本を使用する場合、必ずご一報ください

 

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短編映画『女装アイドルの悩み』劇団ぎょう座【第十作】


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