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執筆者の写真昌俊 和田

オリジナル脚本『わたしの帰る場所』

更新日:7月24日

『わたしの帰る場所』という作品について


親への反発と和解がテーマです


親へのプレッシャーを感じると子どもはつい反発をしてしまいます


それは心の発達において正常なことですが、コミュニケーションが不足しているとわだかまりを解消できないまま深い溝ができてしまいます


子どもにとって実家=親は安息の地として機能するほうが望ましいと思います


和解するチャンスを失っても希望を失ってほしくないという思いからこの作品を作りました


最後の「いってらっしゃい」「ただいま」は実家にいたときは普通に言っていた言葉だと思います


ところが一人暮らしになると言わなくなる言葉です


父親への反発=実家に帰らない、だった人物がこの「いってらっしゃい」「ただいま」を言うことで心の中で和解が済み、心はすでに実家に帰った=自分の帰る場所に戻ったということを表現しています



『わたしの帰る場所』


第一稿


原案・木戸咲也香


作・和田昌俊.木戸咲也香



佐々木琴音(ささき ことね)

地方から上京してきた美容師志望の女性。厳しい父親に反発して大ゲンカして家を飛び出してきた。父親と和解することなく死に別れたことを後悔している。帰り道にナオキにあとをつけられる


ナオキ

琴音のことを後ろからつけている男性。なぜか琴音のことをサヤカと呼ぶ。知的な雰囲気があるが、すこし様子がおかしい


山田湊(やまだ みなと)

ナオキを探している男性。ちょっと粗暴なところがある


鈴木隆(すずき たかし)

ナオキを探している男性。琴音に謝る



※本作において身体的接触少しあります(腕を掴む)セリフにセクシュアルな表現ありません。肌の露出はありません。暴力的表現はありません。喫煙・飲酒シーンはありません






シーン1【昼間の公園】




 佐々木琴音の後ろをついて歩くナオキ


 後ろを気にしている様子の琴音が振り向く


琴音「あの、さっきからなんなんですか?ずっとうしろついてきてますよね」


 ナオキは少し困ったような様子


ナオキ「いや」


琴音「こんなに道が同じってことあります?」


ナオキ「そうだな、サヤカ、ちゃんと自分の家に帰れるかい?」


琴音「は?だれ?サヤカ?帰れるに決まってんじゃん」


ナオキ「道、わかる?」


琴音「え?道?」


 琴音はわけがわからない様子


ナオキ「家まで送ってあげるよ、お父さんが。昨日も同じ会話したなあ。覚えてないか?」


琴音「私はサヤカじゃないし、父親もすでに亡くなりましたので、人違いです」


 琴音は足早に立ち去る




シーン2 【公園のベンチ】




 琴音がベンチに座って紙を眺めている

 手には「選考の結果 不採用」という書類


 元気のない様子の琴音


 そこにナオキがやってくる


ナオキ「ここにいたのか、サヤカ。もう家に帰ろう」


 琴音がナオキに気づいてナオキの方をみる


 ナオキは当然のようにベンチに座る


琴音「この前の・・・」


ナオキ「どうした?元気ないじゃないか。父さんになんでも話してみろ」


琴音「だから人違いだって・・・」


 去ろうとして立ち上がりかける琴音


ナオキ「美容師になるって夢、父さん応援するよ」


琴音「えっ?」


ナオキ「昨日は父さん、突然のことだったからあんな風に怒ってしまったけど、本当は応援したいって思ってるんだ」


琴音「・・・娘さんも美容師目指してるんですか?」


 ナオキは琴音の言葉が伝わっていない様子


ナオキ「今まで厳しくしすぎたのがいけなかったって反省してるんだ。別に医者の娘が医者にならなきゃいけない決まりはないんだから、サヤカはサヤカのやりたいことをやればいいんだよ」


琴音「娘さんは幸せ者ですね。こんな風に応援してくれるお父さんがいて」


 ナオキはぼーっとしたように一点を見つめている


琴音「あんなド田舎で暮らすなんてイヤだったから、大ゲンカして家を飛び出したけど。やっぱりそう甘くないですよねえ」


 琴音は書類を隠すようにカバンにしまう


ナオキ「昨日はあんな風に怒鳴ったりして悪かった。突然家を出てっちゃったから、心配したよ」


琴音「わたしと同じだ。娘さんと気が合いそう」


 琴音は少しだけ笑顔になる


 ナオキは自分に問いかけるように言う


ナオキ「お父さんのこと、嫌いになったか?」

 

琴音「当たり前じゃん。あんなクソ親父。死んで当然」


 琴音は思い出したように悲しそうな顔になる


ナオキ「お父さんのことは嫌いでもかまわない。でも、つらくなったらいつでも家に帰ってきていいんだぞ」


琴音「父親ってみんな同じこと言うんですね。それも、家を出てった後に」


ナオキ「面と向かって言うのは恥ずかしかったから。でもサヤカが出てっちゃってからお父さんずいぶん反省したんだよ。もっとしっかりと送り出してやるべきだった。話を聞いてやるべきだったって」


 ナオキと琴音の間に沈黙が流れる


琴音「あいつもそういう風に思ってたのかな」


ナオキ「いつだって娘の幸せが1番だよ」


 再び沈黙が流れる


 唐突に山田湊がやってくる


湊「あっ、またここにいたんですか。もう勝手にどっか行かないでくださいよ」


 湊はナオキを立ち上がらせようとする


湊「すいません、この人、娘さんを亡くしてから認知症がひどくって、ご迷惑をおかけしました」


琴音「いえ、大丈夫です」


 琴音は心配そうにナオキを見つめる


湊「さあ、ほら、行きますよ」


 少し乱暴に連れて行かれるナオキ


 ナオキは琴音に優しく言う


ナオキ「じゃあ、お父さん仕事に行くから、サヤカも身体に気をつけてがんばるんだぞ」


 立ち去るナオキに琴音は元気に言う


琴音「いってらっしゃい」


 ナオキを見送った琴音はふとつぶやく


琴音「ただいま」


 


暗転


タイトル


END



 





無断転載・無断使用禁止

 

この脚本を使用する場合、必ずご一報ください

 

ご連絡はTwitterDMまたは「劇団ぎょう座」のメールまでどうぞ

和田昌俊 Twitter

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短編映画『わたしの帰る場所』劇団ぎょう座【第四作】


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