タイトルは揺れ動く妻の気持ちはもちろん、心のどこかでは父親のカミングアウトを受け入れたいけれどもそれができない子どもたちのことを表現しています
とかく日本の女性は守ってもらいたいという意識が強く、ジェンダーギャップ指数でも日本は悪い数字で評価されています(ジェンダーについて考え方が平等ではありません)
とくに日本は過去30年経済成長していないことから婚姻率も下がっています
そして結婚の条件として相手に経済力を求める傾向が強いです
それを皮肉として『冷静と愛情のあいだ』で描いています
つまり家族の愛ですらもお金で買えてしまう愛情の希薄な社会について描いています
そして当初は守ってもらいたい女性に変身したはずだった「お父さん」が現実を突きつけられて父親の威厳をなくし、最終的に女性への変化すらためらってしまうラストシーンで終わります
これは実際の性転換した男性でも同じで、実際に女性として生きてみると想定していたのと違っていて悩むことが多いようで、性転換後の自殺率が高いことを表現しています
アドリブ劇『冷静と愛情のあいだ』
和田「父さん、今まで黙ってたんだけど。父さんは今日から女として生きていくことにしたから。みんなビックリさせてごめん」
「こんな父さん見たくないよ」
「ぼくは彼女にフラれて、結婚詐欺にまであったのに、なんだよそのカミングアウト」
「一体何があったの?」
「いや、バイト先で出会ったんだけどさ。元旦那さんがギャンブル中毒で借金して暴力ふるうっていうからかくまっとあげてたんだよ。結婚するつもりだったから、元旦那さんの借金も肩代わりしてあげたんだ」
「そしたら?」
「旦那さんとやり直すとか言って出てっちゃったんだよ。借金だけ肩代わりさせられて」
和田「情けない男ね」
「あんたに言われたくないよ」
和田「そんな風に女々しいからフラれるのよ」
「あんたのが女々しいだろ」
和田「そんな息子を産んだ覚えはないわ」
「あんたは産んでないだろ」
「おれじつはさ、宝くじで三億円当たったんだよ。三億円だぜ」
「おれにもちょうだい」
和田「ちょっと、あたしとおカネとどっちが大事なのよ」
「おカネに決まってんだろ」
「大丈夫よ、わたしはあなたを愛してるから」
和田「わたしも愛してるわ」
「おれ今まで無職で勇気出なかったけど三億円当たった今なら言える。兄さんに紹介されたときから一目惚れしてたんだ。こんなわけのわかんない兄さんと別れて、おれと結婚して欲しい」
「はい、よろこんで」
「えっ?」
「いいこと教えてあげる、オカネで愛は買えるのよ」
「たったいまわたしに愛してるって言ったくせに」
「女心は変わりやすいの、あなたも女ならわかるでしょ?」
「いや、わかんないわかんない。おれちょっと納得いかないから、ちょっと話合おう。なっおい待てって」
エンディング
3億円あったらやりたいことというホワイトボード一人ずつ夢を語る
和田は「三億円あげるのでだれかぼくと結婚して下さい」と書く
短編映画『冷静と愛情のあいだ』劇団ぎょう座第15作(字幕付き)アドリブ劇
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