『無言の告白』という作品について
コミュニケーションとマリッジブルーがテーマです
不安定な心理状況では言葉を積み重ねてしまいがちです
ですが本当に不安なときこそ言葉ではなくて別のものを欲している気がします
言葉だけでは伝わらないことを行動で示すことが大事なんだと思います
コミュニケーションと言語の多様性及び言葉の限界について考えるためこの脚本を書きました
『無言の告白』
第ニ稿
作・和田昌俊
井上樹(イノウエ イツキ)
ウタの婚約者。マリッジブルーで落ち込むウタをはげます。サービス精神旺盛な性格。ウタに振り回されている
井上真春(イノウエ マハル)
イツキの妹。真面目な性格だが遅刻癖がある。お兄ちゃんであるイツキが大好き
木村詩(キムラ ウタ)
イツキの婚約者。過去に一度大失恋をした経験から愛情を疑ってしまう。マリッジブルーで不安定になっていて、無茶ブリをして愛情確認をイツキにせまる
※本作において身体的接触はありません。セリフにセクシュアルな表現はありません。肌の露出はありません。暴力的表現はありません。喫煙・飲酒シーンはありません
ワンシーンのみ
【シーン1 昼間の公園のベンチ】
イツキとウタがベンチで話をしている
ウタ「ねえ、わたしのこと好き?」
イツキ「もちろん」
ウタ「どれくらい?」
イツキ「そりゃめっちゃ好きだよ」
ウタ「英語で言うと?」
イツキ「アイラブユー」
ウタ「中国語で言うと?」
イツキ「えーっとウォアイニー」
ウタ「それ北京語じゃん。広東語で言ってよ」
イツキ「ゴメンゴメン。えーっとンゴーオイネイ」
ウタ「韓国語で言うと?」
イツキ「えーっとサランへ」
ウタ「フランス語で言うと?」
イツキ「ジュテーム」
ウタ「スペイン語で言うと?」
イツキ「ティアモ」
ウタ「ポルトガル語で言うと?」
イツキ「ひっかけ問題だな、ティアモ」
ウタ「じゃあスワヒリ語で言うと?」
イツキ「うーーーんとナクペンダ」
ウタ「タガログ語で言うと?」
イツキ「え?それは新しいパターンだ・・・なんだっけ」
イツキが考え込むと、ウタはきゅうに不安になる
ウタ「愛してないんだ、嘘だったんだ」
イツキ「いや、愛してるよ」
ウタ「じゃあタガログ語で言ってよ」
イツキ「いやタガログ語知らないし」
ウタ「知らなくてもわたしのこと愛してるならタガログ語で言えるでしょ」
イツキ「いや知らなきゃ言えないよ」
ウタ「嘘つき」
イツキ「嘘じゃないって」
ウタ「愛してるって言ったくせに」
イツキ「いやだから愛してるって言ったじゃん」
ウタ「英語で言ってよ」
イツキ「アイラブユー」
ウタ「中国語で」
イツキ「ウォーアイニー」
ウタ「だからそれ北京語じゃん」
イツキ「しまった。ンゴーオイネイ」
ウタ「韓国語で」
イツキ「サランへ」
ウタ「フランス語で」
イツキ「ジュテーム」
ウタ「スペイン語で」
イツキ「ティアモ」
ウタ「ポルトガル語で」
イツキ「ティアモ」
ウタ「スワヒリ語で」
イツキ「ナクペンダ」
ウタ「タガログ語」
イツキ「いやだから知らないんだって。どんどん言語追加するのやめない?」
ウタ「わたしのこと、愛してないんだ」
イツキ「だから愛してるって何ヶ国語で言えば伝わるんだよ」
ウタ「タガログ語」
イツキ「わかったよ、いま調べるから」
ウタ「ズルしないでよ」
イツキ「いや、ズルじゃないでしょ」
ウタ「わかんないことをすぐに調べて知った気になっちゃってさ。それで本当にわたしのこと愛してるって言えるの?」
イツキ「言ってんじゃんさっきから。8言語くらいで」
ウタ「もう信じられない」
イツキ「これ以上どうすれば伝わるんだよ」
ウタ「言葉はいらないんだよ」
ウタの突然の言葉にイツキは困惑する
イツキ「えっ?」
ウタ「本当に愛してるなら言葉はなくても伝わるから」
イツキ「そうだよな、愛してるなら言葉がなくても伝わるもんな」
見つめ合う二人
ウタ「そういえば妹さん遅いね。今日は初めての顔合わせだからドキドキしちゃう」
イツキ「そうだな、マハルはねえ、真面目なんだけど、ときどき遅刻するクセがあるんだよなあ」
ウタ「マハルちゃんに気に入ってもらえるかな」
イツキ「もちろんだよ、あっきた。マハルキタ」
ウタ「ほらね、愛してれば伝わるんだよ」
イツキ「なにが?」
ウタ「タガログ語」
イツキ「いや知らないよ」
ウタ「でもいま言ってた、マハルキタって」
イツキ「愛してるってタガログ語でマハルキタって言うの?」
ウタ「そうだよ」
イツキ「マハルキタ」
ウタ「マハルキタ」
笑い合う二人
ウタ「じゃあ次はねぇ」
イツキ「もうやめよう。言葉じゃなくてこれからは行動で愛してるって伝えるよ」
ウタ「たとえば?」
無言でゆっくり顔を近づける二人
暗転
タイトル
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