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執筆者の写真昌俊 和田

オリジナル脚本『期待の新人』

更新日:7月24日

『期待の新人』


第二稿


作・和田昌俊


アヤネ

劇団タコヤキという映像サークルに所属している女優。鈍感。主役を演じるためにセリフを暗記している


ニニー

期待の新人として劇団タコヤキという映像サークルに入ってきた女優。監督に気に入られて主役に抜擢される


監督

劇団タコヤキという映像サークルを主宰している女性。綺麗な女性が好きでハゲが嫌い。お気に入りがコロコロ変わる


和田

劇団タコヤキという映像サークルに所属する俳優。ハゲ。セリフのある役をやらせてもらえない




※本作において身体的接触ありません。セリフにセクシュアルな表現ありません。肌の露出はありません。暴力的表現ありません。喫煙・飲酒シーンはありません。



【昼間 会議室 劇団の稽古場】


和田がアヤネにシナリオを見せている


和田「このシナリオどうかな?」

アヤネ「正直言っていい?」

和田「うん」

アヤネ「つまんない」


 ガッカリする和田


アヤネ「もういい?そろそろみんなくるし、芝居の稽古したいんだけど」

和田「いや、もう一度よく読んでくれよ、がんばって書いたんだよ」

アヤネ「じゃあ言うけど、出会いが平凡すぎるでしょ。趣味の劇団で知り合って一目惚れしてって、すっごく単純じゃん」

和田「いや、実話をもとにして書いてるから」

アヤネ「ちょいちょい相談に乗ってもらううちに好きになっちゃうなんて、いまどきないからね」

和田「でもそれくらいしかチャンスないじゃん」

アヤネ「そもそも鈍感すぎる女の子なんて、いまの時代流行んないよ。だいたいネーミングセンスなさすぎ、適当すぎんじゃん。このアヤネって名前、アタシと同じだし・・・あれ?」

和田「気づいた?」

アヤネ「もしかして、このイケメンな主人公の和田がアンタで、この恋人役のアヤネって私のこと?」

和田「うん」

アヤネ「実話って言ってたけど、別にアタシたちただの友達で付き合ってるわけじゃ・・・」


 突然ドアが開いて入ってくる監督とニニー


ニニー「ええ〜ほんとにいいんですか?」

監督「もちろんですよ」

和田「あっおはようございます」

アヤネ「おはようございます」


 監督はニニーを紹介する


監督「こちらニニーさん。今度の主役は彼女にやってもらうことにしました」

ニニー「よろしくお願いします」

アヤネ「あっよろしくお願いします。あれ?でも今度の主役は私にやってもらおうかなって言ってませんでしたっけ?」

監督「やってもらおうかな、だから。やってもらうじゃないから。ちょっと今回はまだ早いかなっていう判断です」

アヤネ「そうですか・・・」

監督「アヤネさんにはサブキャストやってもらおうかなって思ってます」

アヤネ「・・・はい」

監督「じゃあ現場入ってシーン1から読み合わせしましょう」

ニニー「あっ監督、私ちょっとトイレ行ってきます」

監督「わかりました。じゃあ先に現場行ってますね、荷物はこの部屋に置いといてください」

和田「あっ監督、あの、今日はぼくは何の役ですか?」

監督「通行人B」

和田「えっ?昨日も通行人でしたけど」

監督「昨日は通行人Aでしょ。今日は通行人B。カツラかぶっとけばわからないって」

和田「いや、あの、そろそろセリフのある役をやりたいんですけど」

監督「いやいや、まだ早いから。映像映れるだけありがたいと思えよハゲ」


 ドアを開けて出て行く監督と新谷香寿穂

 静かになる会議室

 和田が振り返るとアヤネが座って泣いている

 隣に座る和田


和田「また通行人だってさ」

アヤネ「がんばってセリフ覚えたのに」

和田「おれまたセリフないんだけど」

アヤネ「向いてないのかな、アタシ」

和田「そんなことないよ」

アヤネ「なかなか認められない」

和田「あのさ」

アヤネ「なに?」

和田「好きだ」

アヤネ「このタイミングで?」

和田「うん」

アヤネ「嘘くさい」

和田「本当だって」

アヤネ「じゃ、どこが好きか言ってよ」

和田「顔」

アヤネ「直球だな」

和田「正直でしょ?」

アヤネ「こんな顔でも?」


 変顔をするアヤネ


和田「うん」

アヤネ「こんな顔でもいいの?」


 また変顔をするアヤネ


和田「うん。どんな顔でも好きだ」


 少し照れるアヤネ


アヤネ「アンタって時々カッコいいじゃん」

和田「そう?」

アヤネ「ズルイよ、そういうの」

和田「こんな顔でも?」


 変顔をする和田


アヤネ「うん」

和田「こんな顔でも?」


 また変顔をする和田


アヤネ「うん」


 だんだんと笑顔になるアヤネに気をよくしてキメ顔をする和田


和田「カッコいいおれにほれちゃった?」

アヤネ「カッコつけたアンタなんて興味ないから」

和田「ほんとに?」

アヤネ「うん」


 キメ顔をやめて真剣な表情でアヤネを見つめる和田


和田「どんな顔でもいいの?」

アヤネ「どんな顔でもいいの」


 しばらく真顔で見つめ合う二人

 二人の顔が近づいていってキスしそうな雰囲気になった二人を邪魔するようにドアが開く


ニニー「スマホ忘れた!」


 慌てて離れる二人

 ニニーはスマホを取ると二人をチラッと見た後、アヤネの方に勝ち誇ったような笑みを浮かべてすぐに出て行く

 ニニーが出て行ったドアを見つめるアヤネ


アヤネ「アタシ、この劇団、辞めよっかな」

和田「おれ、いいとこ知ってる」

アヤネ「なんてとこ?」

和田「劇団ぎょう座」



END





【期待の新人】という作品について

 

様々な思惑に振り回される人の現状とルッキズムがテーマです

 

監督は映画を成功させるためにキャスティングにこだわる人が多いです

しかし、時にはその選考基準が「見た目」や「フォロワーの数」や「影響力」などの演技力以外の部分で決まることがあります

 

努力が簡単に裏切られる世界です

この作品に登場する和田は監督から嫌われているためにセリフのある役を演じられません

そしてアヤネは主役を演じるために努力したにも関わらず期待の新人女優にその座を奪われてしまいます

 

演技力以外の見た目(顔)を気にする役者や関係者はとても多いです

どんな見た目(顔)であっても好きになってくれる人(ファン)がいることを表現するために、この作品ではあえてどこが好きかきかれて、「顔」と答えています

 

美醜の好みではなく、どんな「顔」であってもその人の個性です

その人自身が好きであることを表現するために変顔を取り入れています

 

どこかにありのままの自分を好きになってくれる人がいるはずです

まだ自分を評価してくれる場所を見つけられていないだけです

『期待の新人』というタイトルは新しい場所で活躍するアヤネの未来のことを表現しています

 

どんな人にも自分を正当に評価してくれる場所が見つかることを願ってこの脚本を書きました

 




無断転載・無断使用禁止


 


この脚本を使用する場合、必ずご一報ください


ご連絡はHPのお問い合わせまたは「劇団ぎょう座」のメールまでどうぞ

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短編映画『期待の新人』 劇団ぎょう座【第22作】(字幕入り)


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