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執筆者の写真昌俊 和田

オリジナル脚本『幸せの条件』(第ニ稿)

更新日:7月24日

『幸せの条件』について

先入観による固定観念からの解放がテーマです。当たり前に思えることが、実は間違っていることもあります。他の選択肢を選ぶ方が生きやすくなることもあるかもしれません。見た目やレッテルや世間の常識という枠で物事を捉えたときに、自分で自分を生きづらくしているのではないかと思うんです。物事を柔軟に考えて受けとめる、そういう発想をしていきたくてこの作品を作りました



「変」という言葉について

この作品ではいろんな意味を持っています

人と違っていることに疑問を感じて「私は人と違っている、変なんじゃないだろうか」という疑問だったり、「男も女も好きな自分は変?」というアイデンティティだったり「名前も連絡先も知らない相手と待ち合わせをする」という変わった提案だったり、「自分の中の今までに感じたことのない愛にとまどって」なにか変だと思ったり、「心配しなくてもいいのに、そんな臆病になるのは変だよ」という相手への思いだったり


変かな?変じゃない。やっぱりちょっと変というこの流れの中にたくさんの気持ちが込められています


変という漢字表記にこだわっているのにも理由があって、「変」という漢字は「恋」と似ています


変かな?という感情を持つことがすでに恋の始まりだという暗示になっています


『幸せの条件』


作・和田昌俊


登場人物4名メインキャスト


ナオキ(カップルの彼氏)

妻子持ちだが、歳の離れたサヤカに恋をしているイケオジ。サヤカとは職場で知り合った。趣味はカメラ。サヤカとの夜の営みを撮影したいと言い、お金を渡そうとして、サヤカに怒られる。実は子どもが作れない身体のため、娘とは血のつながりがない。妻とは関係が冷え切っていて離婚を考えているが、娘の入籍までは離婚を保留にしている


サヤカ(カップルの彼女)

ナオキの彼女。愛に年齢は関係ないと思っている。ナオキがいつまで待っても離婚しないことに腹を立てていて、ちょっと情緒不安定になっている。

職場ではマスコット的存在のカワイイ女性。ナオキのことを愛しているが別れる決意をして、ナオキが自分の部屋に置いていった記念品などを投げ返す


ユズミ(シンガーソングライター)

夜の公園で作曲している美人女性。彼氏に子作りと結婚を迫られているが、イマイチその気になれずにギクシャクしている。そのため最近は恋愛の曲が作れなくてスランプ気味だったところに、歳の差カップルを見つけて興味を持つ。実はバイセクシャルだが公表はしていない。リンカのことが気になっている


リンカ(ダンサー)

夜の公園で振付を考えているミステリアスな雰囲気の美人女性。イケメン好きのため、ブサイクが許せない。思ったことはすぐ口に出してしまうタイプ。最近彼氏とは別れたばかりでカップルを見ると攻撃的になる。実はユズミのことが気になっているがなかなかキッカケがつかめないでいる



※本作において身体的接触はありません。セリフにセクシュアルな表現が若干あります。肌の露出はありません。暴力的表現あります(頬にビンタ)喫煙・飲酒シーンはありません



【シーン1】  夜の公園



ユズミが夜の公園にいてギターを弾きながら作曲している


しかしうまくいかない様子


頭の中は彼氏との言い争いがフラッシュバックする


ユズミの目線の先にはリンカが踊っている


ぼーっと見つめているとナオキとサヤカが公園にやってきて、ユズミの近くのベンチに座る


二人の会話がきこえてくる


サヤカ「いつ奥さんと別れるの?」

ナオキ「もうすぐだよ。いまは娘が入籍するから時期が悪くって」

サヤカ「ずっとそればっかりじゃん。奥さんのこと愛してないとか言って、ほんとは家庭を壊したくないんでしょ?」

ナオキ「ぼくはサヤカのことを愛してるよ」

サヤカ「うそつき」

ナオキ「うそじゃないって。だからこれ」

財布からお金を出そうとするナオキ

ナオキ「あと、二人の記念に今日は撮影しながらしたいんだけど」

サヤカ「はあ?何言ってんの?わけわかんない」

ナオキ「ぼくサヤカのこと愛してるから、ほらお金受け取ってさ、写真撮らせてよ」

お金を渡そうとするナオキの手を振り払うサヤカ

サヤカ「私、そんな女じゃないっ!」


サヤカは立ち上がって公園の奥へ行く


ナオキも立ち上がって追いかけていく


二人はケンカしながら公園内を足早に歩く


リンカの近くをサヤカが通ったとき、ナオキがサヤカの腕をつかむが、サヤカが振り払う


サヤカの振り払った腕がリンカにぶつかる


リンカに謝らずにサヤカはズンズン歩いていく


ナオキはリンカにペコっと頭を下げてサヤカを追いかけ、再度腕を掴むが振り払われる


振り向くサヤカ


サヤカ「私、そんな都合の良い女じゃないからっ!」


ナオキをビンタするサヤカ


ナオキのメガネが吹っ飛ぶ


土下座するナオキ


ナオキ「すまなかった。サヤカこの通りだから」

サヤカ「ナオキのバカッ」


サヤカはズンズンと歩いて公園を出ていく


ユズミはナオキのメガネを拾い、ナオキのそばに行く


ナオキ「うう・・・サヤカ・・・サヤカ・・・」


ユズミは優しく声をかける


ユズミ「大丈夫ですか?」


メガネを受けとるナオキ


ナオキ「あ、ありがとうございます」

ユズミ「立てますか?」

ナオキ「はい、大丈夫です」


ユズミはナオキに手を貸して立ち上がらせる


ナオキ「すいません」

ユズミ「いえ、なんかすごかったですね。あんなの映画やドラマでしかみたことなかったです」


二人は歩きながらベンチの方へ向かう


ナオキ「いやあ、お恥ずかしいところをお見せしちゃって」


ナオキとユズミはベンチに座る


ユズミ「いえ、大丈夫なんですか?彼女さん、かなり怒ってたみたいですけど」

ナオキ「あの子の幸せを考えたら、ぼくは嫌われたほうがいいんですよ。彼女は若い。まだこれからたくさんの出会いがあるんですから」

ユズミ「失礼ですけど、そんなの傲慢じゃないですか?あの子の気持ちは無視ですか?本当は自分が傷つくのが嫌だからなんでしょ?」


ユズミの唐突な質問に少し驚きながらも、ナオキは落ち着いてこたえる


ナオキ「そう、ぼくの傲慢です。彼女には幸せになって欲しいっていうぼくの傲慢」

ユズミ「なにそれ」


ユズミはわけがわからない様子で少しあきれる


ナオキ「愛してるから幸せになって欲しい。そのためには、ぼくが一緒にいちゃいけないんです」


意地悪というよりかは、純粋に知りたい好奇心からの質問として


ユズミ「奥さんと娘さんがいるからですか?」

ナオキ「妻とは彼女と会う前から離婚する予定でした。娘が入籍するんで、一旦保留にしてただけで、もともと冷えきってたんですよ」

ユズミ「だからって娘さんの気持ちを考えたら」

ナオキ「・・・娘とは血のつながりがないんですよ。医者に言われました。ぼくは子どもができない身体だそうで」

ユズミ「娘さんは知ってるんですか?」

ナオキ「知りません。生まれた時から自分の娘として育ててきましたから、このまま傷つけたくない。でも妻は僕のことを薄々気づいてたはずです。何年も子どもができませんでしたからね。あいつも子どもが欲しかったんだと思います」


メガネを拭きながらナオキは昔を思い出したように遠くを見つめている


ユズミは自分のギターを見つめながらナオキの方を見れないでいる


ユズミ「私は、家族っていう存在に疑問があって。彼氏はすぐに子どもが欲しいって言って、だから結婚しようとか言ってくるんですけど、私は自分のことだけでいっぱいいっぱいっていうか。まだ結婚とか子どもとか考えられないし」


今度はナオキが唐突に疑問を投げかける


ナオキ「その彼氏さんのこと愛してるの?」

ユズミ「うーん、好きだけど、結婚するほど好きかって言われると、微妙な感じですね。私、実は女の子とのほうがうまくいくんですよ」

ナオキ「ああ、なるほどね」


特に驚きもせずになにかを察したようなナオキ


ユズミ「一緒にいてしっくりくるのは女の子かなって。でも男の人も好きなんです。SEXはやっぱり男としたいし、でも女の子といると自分が素のままでいられるっていうか」

ナオキ「自分の気持ちが安らぐ相手っていいよね」


ナオキの言葉にユズミは全力で肯定してナオキのほうを振り向く


ユズミ「そう、そうなんですよ」

ナオキ「ぼくは妻や娘と一緒にいるより、サヤカと一緒にいるほうが心が安らぐんだ」


ユズミはナオキのことを寂しそうに見つめる


ユズミ「愛する存在が家にいるって羨ましいって思ってました」

ナオキ「自分を愛してない存在が家にいるのは地獄だよ」


ナオキは自分の言葉に傷ついたかのようにうなだれてしまう


重い空気をうちやぶるかのように、たったいま気がついたかのような動きでユズミのギターを指差すナオキ


ナオキ「すごいね、ギター、なにか弾いてよ」

ユズミ「ああ、私いまスランプなんですよ」


ユズミが苦笑いを浮かべて譜面をいじる


ユズミ「恋愛の曲がうまく書けなくって。やっぱり私生活が影響しちゃうっていうか」

ナオキ「うまくいってないの?」

ユズミ「うーん、まあそうですねえ」


ユズミは顔を上げてリンカの方を見る


リンカは踊りながら時折ユズミとナオキのほうをチラッと見ている


ナオキ「まあ、ぼくが言うのもなんだけどさ、自分の気持ちに正直になるのが一番だよ」


ナオキは立ち上がって軽くユズミに会釈する


ナオキ「じゃあ、ぼくはもう帰るよ。うまくいくといいね」


ユズミは座ったまま軽く会釈する


ユズミ「ほっぺたお大事に」


ユズミはナオキが去った後も物思いに耽る



【シーン2】   夜の公園 一週間後



ユズミはギターケースを抱えていつものようにベンチに向かう


ベンチに座ってリンカの姿を探すユズミ


すると奥の方で踊っていたリンカがユズミに気がついて近づいてくる


気がつかないフリをするユズミが、書きかけの譜面をいじっているとリンカが話しかけてくる


リンカ「これ、落ちてたよ」

ユズミ「えっ」


リンカの手の中のギターピックを見るユズミ


ユズミ「あっありがとう」


ピックを受け取るユズミ


リンカ「よく来るよね」


リンカはユズミを見ながら話し続ける


ユズミ「あ、うん」

リンカ「そこ、座ってもいい?」


リンカはユズミの近くのベンチを指差す


ユズミ「あ、うん」


ユズミもリンカもベンチに座る

おもむろにペットボトルの水を飲むリンカ


飲み終わるとまたユズミに話しかける


リンカ「この前も来てたよね」

ユズミ「あ、うん」


リンカから受け取ったピックでギターを弾くような素振りをするユズミ


リンカ「なんかオッサンとしゃべってた」

ユズミ「そうそう、見てたんだ」

リンカ「見てたよ」

ユズミ「なんか恥ずかしいな」

リンカ「私あんま社交的じゃないから、そういう性格、羨ましいなって思って見てた」

ユズミ「そんなことないよ」

リンカ「何話してたの?」

ユズミ「うーんとね、愛について語りあってた」

リンカ「へえ、オッサンと愛について語ってたんだ」

ユズミ「そう、私って変?」

リンカ「べつに、変じゃないよ」

ユズミ「ありがとう」

リンカ「知り合いなの?」

ユズミ「全然、あの日が初対面」

リンカ「やっぱりちょっと変」

ユズミ「ひどいなあ」

リンカ「ウソ、そういうとこちょっといいかも」

ユズミ「なにが?」

リンカ「知らない人にも自分の意見を言えるところ」

ユズミ「いま私たちそうしてるじゃん」

リンカ「なんだろう、私ってけっこう良い子ちゃんを演じちゃうところがあるからさ、それで結構うまくいかないんだよね」

ユズミ「男に求められるとNOって言えないタイプなんだ?」

リンカ「実はそう」

ユズミ「・・・いつ別れたの?」

リンカ「見てたの?」

ユズミ「目腫れてたから」

リンカ「この前オッサンが土下座してた日」

ユズミ「先週じゃん」

リンカ「そう、ようやく吹っ切れた。昨日共通の知り合いから連絡きてさ、あいつ私と別れたすぐあとに入籍したんだって」

ユズミ「うわあ、ひどいね」

リンカ「ううん、気がつかなかった私がバカだっただけ。なんかあせってたのがいけなかったのかも」

ユズミ「やっぱり親とか?」

リンカ「結婚しろってうるさいから」

ユズミ「心に隙が生まれちゃったんだね」

リンカ「そう、あせって自分を見失ってた。そっちは?」

ユズミ「私はようやく自分の気持ちに気がついてきたってとこかな」

リンカ「結婚するの?」

ユズミ「逆、結婚しない。別れようかなって」

リンカ「ふーん」

ユズミ「べつに不満はないんだけど、一緒にいて落ち着く相手じゃないっていうか」

リンカ「ああ、わかる。一緒にいて落ち着く人がいいよね」

ユズミ「そう、私が求めてるのはそういう人」

リンカ「そういう男って出会ったことないな」

ユズミ「そうそう。私も、なぜか落ち着くのは女の子ばっか」

リンカ「そうそう」


一瞬盛り上がりかかるが二人の間に沈黙が流れる


唐突に公園にナオキが入ってくる


ユズミはナオキに気がついて手を振る


ナオキもユズミに気がついて手を振って応じるが公園の反対側の入り口を見て、すぐにやめる


公園の入り口よりサヤカがくる


ユズミとリンカは二人でその様子を見ている


サヤカはナオキのところまでくると、手にぶら下げた袋から、歯ブラシやコップや写真立てや何かの記念品や男物のパンツなどをナオキに投げつける


サヤカは泣きそうな顔で背中を向けて公園から出ていこうとする


ナオキは思わず追いかけようとするが、我慢するようにそれをこらえる


サヤカが公園から出ていくのを見守るナオキ


ナオキはユズミとリンカのほうへ軽く会釈すると、サヤカが帰って行ったのとは反対の方から公園の出口へ向かう


リンカ「結局フラれちゃったんだね」

ユズミ「ううん、フったんだよ」

リンカ「どういうこと?」

ユズミ「人は時に愛してるからこそ傲慢になるんだって」

リンカ「よくわからないなあ」

ユズミ「ねえ」

リンカ「なに?」

ユズミ「私たちって似てるかな?」

リンカ「うーん、どうだろ、私は初対面のオッサンと愛について語んないしな」

ユズミ「初対面の女とは語るのに?」

リンカ「そう、私って変?」

ユズミ「べつに、変じゃないよ」

リンカ「ありがとう」


少しの沈黙


リンカ「ねえ、またこうして会おうよ」

ユズミ「いいよ、連絡先交換しよっか?」

リンカ「ううん、しない」

ユズミ「えっ?」

リンカ「来週また同じ時間にこの場所で会いたい。本当にお互いが会いたいって思ってるなら、きっとまた会えるはずだから」

ユズミ「名前もその時までヒミツ?」

リンカ「そう」

ユズミ「やっぱりちょっと変」

リンカ「ひどいなあ」

ユズミ「ウソ、そういうとこー」

リンカの方へ向きながら

ユズミ「ちょっといいかも」

リンカはユズミのほうへ向きながら

リンカ「やっぱりちょっと変」

と言って笑う


暗転






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