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執筆者の写真昌俊 和田

オリジナル脚本『二人の思い出』

更新日:7月24日

『二人の思い出』  第一稿




作・和田昌俊




登場人物四名



加藤 瑞稀(かとうみずき)

吉田凪の恋人。事故で死亡した。本当は吉田が死亡するはずだったが、死神との取引によって自分が身代わりとなった。寿命の交換の代償に地獄に行くことになり、最後のお別れに現れる。生きている人には見えない


吉田 凪(よしだなぎ)

加藤瑞稀の恋人。事故で瑞稀を亡くして落ち込んでいる。事故によるケガがなかったことを不思議に思っている。加藤瑞稀との思い出を忘れたくなくて、二人の思い出の場所にきては加藤を思い出している


吉田 直樹(よしだなおき)

凪の父親。事故で恋人を亡くしてから元気がない娘のことを、心配して外に連れ出している。加藤のことは気に入っていた。少し過保護。娘との距離感をうまくつかめないでいる


死神(しにがみ)

大切な人を失った人間に取引を持ちかける悪魔。寿命の交換を持ちかけて、その人間にとって大切な人の命を救う。その代わりに身代わりとなった人間を強制的に地獄に連れていく。ノルマが厳しいので、できるだけ若くて善人を地獄送りにすることで点数を稼ごうとする。取引を持ちかける時以外は生きている人に姿を見せない



※本作において身体的接触少しあります(手で目隠し)セリフにセクシュアルな表現ありません。肌の露出はありません。暴力的表現はありません。喫煙・飲酒シーンはありません




【シーン思い出の公園 回想】


 ベンチで吉田凪がだれかを待っている


後ろから加藤瑞稀がそーっと近づいてきて吉田凪の目を手で隠す


瑞稀「だーれだ?」


凪は笑顔になりながら


凪「ミズキでしょ」


目隠しを外して凪のとなりに座る瑞稀


瑞稀「なんでわかっちゃったの」

凪「わかるよ」


笑顔の二人




【シーン現在の公園】



 回想シーンと同じベンチに座っている吉田凪

 隣に座っている吉田直樹が心配そうに話しかける


直樹「ナギ、大丈夫か?」

凪「うん」

直樹「あの事故のことを思い出してたのか?ケガがなくて良かったじゃないか」

凪「うん」


 元気のない凪を心配そうに見つめながら


直樹「ミズキくんのことは父さんも残念に思うよ。でもそのぶん、凪が代わりにがんばって生きていかなきゃいけないよ」

凪「うん」


 凪はなにかを思い出しているかのように公園内を見渡す


直樹「そろそろ帰ろう。タクシー呼んでくる」


 直樹は逃げるようにその場を離れる


 その様子を遠くから見守っている加藤瑞稀と死神


死神「本当に寿命を交換しちゃって良かったのか?強制的に地獄行きなんだぜ」

瑞稀「いいんです。彼女がこの世界に少しでも長くいられるなら」

死神「あと70年は生きられたのにもったいない」

瑞稀「取引したのに心配してくれるんですね。死神さんもいがいといいところあるんだ」

死神「おれは優しい死神だからな」


 照れたように笑う死神


瑞稀「もう、時間ですね」


 瑞稀が心配そうにきく


 死神はキッチンタイマーを取り出しながら


死神「おまけしとく」

瑞稀「ありがとうございます」


 瑞稀は凪の座っているベンチへと向かう


 凪のとなりに座る瑞稀


 瑞稀の姿が見えない凪は瑞稀のほうを見ようともしない


 瑞稀も凪のほうを見つめるがうまく言葉にできない様子


瑞稀「なんて言えばいいのかな」


 凪は聞こえない様子で座っている


瑞稀「ずっと一緒にいたかった」


 しばらく無言の凪と瑞稀


 直樹がやってきて凪に声をかける


直樹「タクシーきたぞ。もう行こう」


 凪は軽くうなずく


 直樹は先に歩きだす


 凪は大きく息を吐くと見えないはずの瑞稀のほうを見る


凪「ずっと一緒だよ」


 凪は瑞稀を見つめながら


凪「また会いにくるね」


 ベンチから立ち上がる凪に瑞稀が声をかける


瑞稀「幸せになれよ」


 凪がベンチを背に歩きだすが、瑞稀の姿はどこにも見当たらない



暗転


タイトル


END

 



無断転載・無断使用禁止

 

この脚本を使用する場合、必ずご一報ください

 

ご連絡はTwitterDMまたは「劇団ぎょう座」のメールまでどうぞ

和田昌俊 Twitter

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短編映画『二人の思い出』劇団ぎょう座【第二作】


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