きみのいない世界
第ニ稿
作・和田昌俊
井上悠人(いのうえゆうと)
美桜の彼氏。美桜に呼び出されて部屋で話をする。付き合ってしばらく経つがまだ肉体関係は結んでいない。美桜のことを大切に想っているが口下手でうまく伝えられない。美桜にプロポーズする
斉藤美桜(さいとうみお)
悠人の彼女。元カレが遊び人だった。悠人は初めてのタイプだったがいい関係を築いている。肉体関係にならず、結婚の話もしない悠人に半ば愛想を尽かして元カレと久しぶりに会ってしまう。悠人に別れ話をする
※本作において身体的接触少しあります(腕をつかむ。抱き合う)セリフにセクシュアルな表現ありません。肌の露出はありません。暴力的表現ありません。喫煙・飲酒シーンはあ りません
【美桜の部屋】
悠人と美桜が部屋にいる
美桜は浮かない表情
悠人はなにか違和感を感じつつも口を開く
悠人「好きだ」
美桜「ありがと」
悠人「どうしたんだよ」
美桜「別れよ」
悠人「なにがあったんだよ」
美桜「べつに」
悠人「昨日の電話、ちょっと様子がおかしかったけど、なんかあった?」
美桜「知らないほうがいいと思う」
悠人「おれのこと嫌いになった、とか?」
美桜「そう、嫌いになった。これでいい?」
悠人「ウソつくなよ」
茶化すようにふざけて美桜をつつく
美桜「触らないで」
拒絶する美桜
美桜「もうあなたといたくないの」
悠人「なんだよそれ」
美桜「いいからもう帰ってよ」
美桜の雰囲気に戸惑いつつも決心した様子で指輪を取り出す悠人(悠人は結婚について話さないから美桜が怒っているんだと勘違いしている)
悠人「おれ、これからのこと真剣に考えてる」
プロポーズする悠人
悠人「結婚しよう」
美桜「バカじゃないの」
美桜は戸惑いを隠せない。その様子を見て悠人は美桜が照れているんだと思い込む
悠人「返事はYESってこと?」
美桜「タイミング考えてよ」
真剣な表情の美桜
悠人「別れる前に言えたから上出来」
美桜は決心したように告白する
美桜「エイズ。昨日元カレから連絡きた」
悠人「えっ?」
美桜「別に無理して私と付き合う義理ないから、別れよ」
何も言えずにショックを受けている悠人
美桜「バカな男と付き合った私のせいで、迷惑かけちゃったね、ごめんね」
美桜は今までとは違って悲しそうに言う
悠人はしばらく考えたあと、美桜にもう一度指輪を差し出す
悠人「きっと乗り越えられるよ」
美桜「簡単に言わないで」
悠人「本気だ」
美桜は悠人の顔を見ると自分の決心が揺らぎそうになるのを感じる
美桜「もう信じられない」
立ち去ろうとする美桜
悠人「行くな」
腕をつかんでひきとめる悠人
悠人「愛してる」
美桜「おそいよ」
美桜は自分の過ちについて言っているが、悠人は自分のプロポーズのことだと思い込む
悠人「わかってる」
美桜「乗り越えられるわけないじゃん」
悠人「それでも一緒にいる」
美桜「意味ないじゃん」
悠人「意味なんてなくていい」
美桜「意味わかんない」
悠人「きみのいない世界に意味なんてない」
美桜「やめてよ」
悠人「俺から離れるな」
美桜「やめてよ」
悠人「どこへも行くな」
美桜「やめてよ」
悠人「愛してる」
美桜「信じたくなっちゃうじゃん」
悠人「愛してる」
美桜「無理」
悠人「愛してる」
美桜「無理」
悠人「愛してる」
美桜「無理」
そう言って振り返ると悠人の腕を引き寄せる美桜
美桜「もう離れてあげない」
抱きつく美桜をそっと抱きしめる悠人
悠人「もう離さない」
【HIV感染者/AIDS患者の死者数は年間約65万人】
【新規感染者は年間約150万人】
『きみのいない世界』という作品について
「HIV感染およびエイズ発症」と「結婚相手が性感染症だったら」がテーマです
性感染症は将来のパートナーにまで影響します
結婚相手がもし性感染症だったとしたら、その愛は冷めてしまうのかそれとも二人で乗り越えられるのか
タイトルの『きみのいない世界』は登場人物の二人が、お互いが存在しない世界を想像しているという意味です
自分が本当に大切にしたい人ができた時に後悔しないためにも、リスクについて正しく知り、危険を回避する力を身につけなければいけません
様々な条件や状況で「HIV感染およびエイズ発症」をしてしまったとしても人生は続いていきます
希望を捨てずに生きるには愛の力が必要です
病に立ち向かう愛の力を、病に苦しむすべての人が得られることを願ってこの脚本を書きました
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