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  • 執筆者の写真昌俊 和田

オリジナル脚本『星の子守歌』

更新日:2023年11月11日

『星の子守歌』という作品について


母子愛がテーマです。妊娠出産という人生における大きな出来事を前に不安になることがあると思います


人の数だけ決断がありますし、その決断を否定する作品ではありません


人の数だけ人生があり、一人の人間はその他多くの人の人生に関わっていきます


一人の命が時にはこの星の運命を変えることがあるかもしれません


大きな運命に導かれて人はこの世に生を受けています


この作品の登場人物はこの星の子守歌(不思議な力)で寝かしつけられたのかもしれません


子守歌には安心させて眠りにつかせる不思議な力があると思います


それを表現するために「星の子守歌」というタイトルにしました


もしも少しだけチャンスがあるなら、もしもやり直すことができるなら、もしも可能性を見出すことができるなら


無責任かもしれませんが、一人でも多くの人に明るい未来を想像してほしくてこの作品を作りました



「未婚の母は10年間で2倍に増えている」



「日本のひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%

これは先進国で最悪の数字」



『星の子守歌』


第ニ稿


作・和田昌俊



佐々木琴音(ささき ことね)

絶望して薬を大量に飲む女性。


結愛(ゆあ)

琴音に話しかける年配の女性




※本作において身体的接触ありません。セリフにセクシュアルな表現ありません。肌の露出はありません。暴力的表現はありません。喫煙・飲酒シーンはありません






シーン1【夜の公園】(※撮影状況により昼に変更も可)


公園のベンチに座っている琴音が何かを口に入れてペットボトルの水を飲んでいる(お腹の子どもについて相談するため彼氏と会う約束をしていたが、無視されている)


ペットボトルを置くと、そばには空っぽになった薬の瓶とスマホ


琴音は薬を飲んだせいでまどろんでいる


スマホの画面が映る


「堕ろせよ、費用は出すから」の文字


ボーッとしているとそばに結愛が立っているのに気がつく琴音


琴音「だれ?死神?天使?」


なにも言わずにほほえむ結愛


琴音「だれでもいい。どうせもうすぐ眠るように死ぬだけ」


 琴音は独り言のようにつぶやく

 結愛は琴音のそばにきて座る


結愛「どうして死にたいの?」

琴音「関係ないでしょ」


 結愛から逃げるように顔をそむけると自分のお腹に手を置く琴音

 寂しそうに見つめる結愛


結愛「お腹の子どもが原因?」


 一瞬だけ動揺した様子の琴音が吐き捨てるように言う


琴音「ていうかわたしの問題。こんな欠陥だらけの人間が母親になんてなっちゃダメなんだよ」

結愛「ダメな母親なの?」

琴音「いつも信じてだまされてばっか」


 スマホをチラッと見る琴音(インサートでスマホを映す)


結愛「それって欠陥なの?」

琴音「説教するならあっちいって」

結愛「そんなんじゃないよ」


 少しだけ二人の間に沈黙が流れる


琴音「なにもいいことなんかない」

結愛「そんなことないって」

琴音「もう終わりにする」

結愛「お腹の子どもには会いたくないの?」


 サラリと言う結愛の言い方にイラッとする琴音


琴音「おせっかいなババアだな」


 琴音はウザったそうにくってかかる


琴音「あんたになにがわかんだよ」


 すました顔で結愛が言う


結愛「わかるよ」


 またいつものやつかというふうにウンザリな琴音があきれたように言う


琴音「人生の先輩としてってやつでしょ」

結愛「そんなんじゃない」

琴音「ウザいのは母親だけで十分」


 少しだけ遠くを見つめる琴音

 その様子を見た結愛が思い出すように言う


結愛「たしか去年亡くなってるんだよね」

琴音「なんで知ってんの?」


 質問に答えずにほほえむ結愛

 琴音を見つめて同情するように言う


結愛「頼れる人がいないのはつらいよね」


 その様子にまたもやイラつく琴音


琴音「あんたが助けてくれんのかよ」

結愛「いまは無理かな」

琴音「どうせだれも助けてくれない」

結愛「そんなことないって」


 真剣に真顔で言う結愛をバカにするように琴音が言う


琴音「どうせあんたは親に愛されて甘やかされて育ったんでしょ」

結愛「うん、そうだよ」


 心の底から嬉しそうに言う結愛にもはや琴音はイラつきを通り越してうらやましくなる


琴音「あんたのママがうらやましい」


 結愛は琴音を見つめながら、今までとは打って変わって悲しそうに言う


結愛「でも一緒に過ごした時間は短かったから。本当はもっと長く一緒にいたかったんだけど」

琴音「マザコンかよ」

結愛「きっとそうだね。いつもずっとそばにいてくれる気がするから」


 琴音をまっすぐ見つめる結愛

 いよいよ薬が効いてきて意識が朦朧としてくる琴音


琴音「きっといいママだったんだね」

結愛「そうだよ。最高のママだった」


 結愛は琴音に向かって笑う


琴音「わたしはきっとそんなママにはなれないな」


 お腹に置いた手を見つめる琴音


結愛「なれるよ」

琴音「なんでそんなハッキリ言えるんだよ」

結愛「わかるから。ただそばにいてくれればそれでいいんだよ」

琴音「それだけじゃダメでしょ」

結愛「それだけでよかった」

琴音「変なの」


 結愛は琴音を見て笑っている


琴音「なにニヤニヤしてんの」

結愛「夢が叶ったから」

琴音「ゆめ?」

結愛「旅立つ時は親しい人が迎えにきてくれるってやつ」

琴音「え?」

結愛「子どもの頃からずっと願ってた。もう一度ママに会いたいなって」

琴音「なにそれ」

結愛「感謝を伝えたくってさ。少ししか一緒にいられなかったけど、楽しい思い出がいっぱいあるんだよって」

琴音「もしかして」

結愛「もう行かなくちゃ」


 結愛は立ち上がる


結愛「つらいこともいっぱいあるけど、楽しいこともいっぱいあるから」


 そう言って微笑む結愛


結愛「会えてよかった」

琴音「待って」


 自分のお腹に置いていた手で思わず結愛の手を握ってひきとめる琴音

 何かに気づいたようにハッとする琴音


結愛「大丈夫。大丈夫だから」


そう言って立ち去る結愛の手が琴音から離れていく

だんだん意識を失う琴音(カメラがピンボケしていく)



シーン2 【明け方の公園】(※撮影状況により昼に変更も可)



気がついた琴音。起きるとあたりには誰もいない。でも手の温もりだけは残っている。

薬の瓶が映る。中身は入ったまま

お腹に手をあてる琴音


「ありがとう」



END




「未婚の母は10年間で2倍に増えている」


「日本のひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%

これは先進国で最悪の数字」






無断転載・無断使用禁止

 

この脚本を使用する場合、必ずご一報ください

 

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劇団ぎょう座 メール

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