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  • 執筆者の写真昌俊 和田

オリジナル脚本『ぼくの秘密』第ニ稿

更新日:2023年9月20日

『ぼくの秘密』という作品について


愛とジェンダーギャップがテーマです。人は無意識のうちに「男性ならこうあるべき」「女性ならこうあるべき」と決めつけてしまいます。男女平等やジェンダーレスな社会を目指そうとしても、現代社会に生きるぼくたちの意識の中には、まだまだ変えなければならない無意識下の差別があると思うんです


ジェンダーギャップに悩んでいる人にとっては、自分のジェンダーについて告白することが、その当人にとって最も打ち明けづらい部分だと思います(たとえ、他にどんな秘密を抱えていたとしても、ジェンダーについての告白が1番勇気が必要なんだと思います)


だからこそ、この作品に登場する人物にはジェンダーの秘密以外にもたくさんの秘密を持たせています

第三者からすればどれもすごい秘密のように思いますが、本人にとってはジェンダーギャップについて告白することが1番スッキリできることだったんです


近い将来、男性が普通にブラジャーをつけて生活できるような寛容な社会に、そしてジェンダーギャップに悩んでいる人が普通に受け入れられる社会になることを願ってこの脚本を書きました



『ぼくの秘密』 第ニ稿



作・和田昌俊



メインキャスト3名


渡辺大和(わたなべ やまと)

中年童貞のハゲデブ男性。男性の友達はたくさんいるが、女性にはまったくモテない。カツアゲされていたところを、伊藤に助けられてから付き合いはじめる

伊藤とは2年以上の付き合いになるが、いまだに身体の関係にはなっていない。ある秘密を隠していて、伊藤に告白する



伊藤葵(いとう あおい)

サバサバした美人。男性からはチヤホヤされ、女性からは憧れられている。

あまりニュースをみないが、世界情勢に詳しい。身体が丈夫で風邪をひかない。腕っぷしも強く、格闘技に秀でていて伊藤をカツアゲから救う。すぐに身体の関係を求めてくる男性が苦手



中村杏(なかむら あん)

ミステリアスな雰囲気の美人女性。伊藤とは仲が良く、二人でよくおしゃべりをしている

伊藤のことを常に心配している。渡辺とは面識がないが、かなり詳しい。イケメンの彼氏がいる。焼肉が大好き



※本作において身体的接触はありません。セリフにセクシュアルな表現が少しあります。肌の露出が少しあります(右足太もも)。暴力的表現はありません。喫煙・飲酒シーンはありません





【シーン1】  昼間の公園




昼下がりの公園のベンチで、伊藤と中村が二人で座っている


伊藤は深刻な顔をしている


伊藤「なんかさ、大事な話があるんだって」


中村「おっ、ついにプロポーズかな。葵に先を越されたかぁ」


伊藤「・・・見ちゃったんだよね」


中村「なにを?」


伊藤「いや、たまたまなんだけど、ベッドの下に女物の下着があってさ」


中村「あちゃー、あんたがいつまでたっても身体の関係になんないから、浮気しちゃったんだよ」


伊藤「付き合って2年だもんね」


中村「よく我慢してたと思うよ。男なんて頭の中そればっかりなんだから。相手の女が気になるね、下着はどんなやつだったの?」


伊藤「うん、派手でいやらしい感じのやつだった」


中村「大事な話って、たぶん浮気の告白だよ」


伊藤「だよね、許せないけど、別れたくないって思っちゃう自分がいてさ。付き合ってもう2年経つのに、キスもしたことなかったし」


中村「とりあえず、まずは相手の話をしっかりきいてあげな。別れるかどうかはそのあと決めればいいじゃん」


伊藤「そうだよね、うん、まずは冷静に怒らないできいてみる」




【シーン2】   渡辺の部屋




渡辺と伊藤が並んで座っている


渡辺「おれ、葵との関係を大事にしたいって思ってるんだ。一緒にいると落ち着くしさ、なんだか安心するんだよね。他の女の人とは目を見て話ができないんだけど、ほら葵とはなぜか緊張しないで話せるしさ」


渡辺はいつになく真剣な様子で話し続ける


渡辺「身持ちは固いのに、下ネタとかも付き合ってくれるし、おれが風邪ひいた時も何日も飲まず食わずで徹夜でずっと看病してくれてさ。ニュースとか全然みないのに、これからの世界情勢とかすごく詳しいし、頭もいいしさ。おれとは全然つり合わない魅力的な人だなって思ってる」


伊藤は別れ話の予感を感じつつ、少し落ち着かない様子


伊藤「私もすごく安心するんだ。今まで付き合った男はすぐにヤリたがる男ばっかでさ。エッチしないでこんなに長く付き合ってるの、あんたくらいだよ」


二人の間に沈黙が流れる


沈黙を破るように伊藤が口をひらく


伊藤「ところでさ、大事な話って、なに?」


渡辺「おれ、実は言わなきゃいけないことがあってー」


伊藤「知ってるよ」


渡辺「えっ?」


伊藤「見つけちゃったんだよね、ブラジャー」


渡辺「えっ、見たの?ごめん、隠してたつもりだったんだけど」


伊藤「隠すの下手なんだもん」


渡辺「ずっと言い出せなくって・・・」


伊藤「いつからなの?」


渡辺「葵と出会うちょっと前からかな・・・」


伊藤「そんなに長かったんだ、なんかショックだな」


渡辺「ごめん・・・自分でもどうしようもなくって。やめようやめようって思うたびに、自分の中の欲望を抑えられなくなって」


伊藤「私が我慢させすぎちゃったのかもね」


渡辺「いや、おれがもっと早く打ち明けていれば良かったんだよ」


伊藤「その気持ちがうれしい」


渡辺「なんだか、カッコつかないけど、でももうこれ以上自分の気持ちにウソはつけない。おれ、葵のこと、大切に想ってる。この気持ちは本当なんだ」


伊藤「うれしい」


渡辺「だから、すっごく恥ずかしいけど、今日は特別な日にしたくってさ。葵におれの本当の姿を見てほしい」


渡辺は急に服を脱ぎ出して、伊藤はあせって手で目をおおう


伊藤「ちょ、ちょっと、ダメだよ。まだ心の準備が・・・」


渡辺の動きがとまり、伊藤は目を開ける


渡辺「おれ、セクシーな下着が大好きなんだ。毎日ブラジャーつけてる」


赤いブラジャーをつけた渡辺


渡辺「こんな変態、嫌いになったよね」


伊藤のことを見つめる渡辺


渡辺は伊藤に嫌われたと思って覚悟を決めている様子


伊藤「そんなこと関係ないよ。どんな下着をつけていても、あんたの存在は変わらないから」


何かを決意したように伊藤は立ち上がる


伊藤「じつは私も言わなくちゃならないことがあって・・・ずっと秘密にしてたんだけど」


真剣な表情で渡辺を見つめる伊藤


伊藤「私、本当は男なの。それでもいい?」


渡辺「えっ?」


下半身を見せる伊藤{※カメラは太ももから下だけ映す)


驚きながら小声で渡辺はつぶやく


渡辺「デカ・・・」


伊藤は悲しそうな顔で渡辺を見つめる


伊藤「ごめんね、嘘ばっかりのわたしで」


渡辺は伊藤を見つめて言う


渡辺「かまうもんか。どんな姿であっても、この気持ちは変わらない」


伊藤「ありがとう。わたしもあなたがどんな姿でもかまわない。大切に想ってる」


渡辺「おれも大切に想ってるよ」


見つめ合う二人



暗転



タイトル



エンディングロール




エンディング後



公園で伊藤と中村が二人で並んで話をしている


中村「で、結局浮気してたわけじゃなかったんだ」


伊藤「うん。でも結果的には良かったかなって。カミングアウトもできたし」


中村「男だってこと、ついに言ったの?」


伊藤「うん」


伊藤はスッキリしたような表情をしている


中村は身を乗り出して少し声をおさえる


中村「・・・未来からきたってことはまだ言ってないの?」


伊藤「うん」


中村「じゃあ、機械生命体だってこともまだ言ってないんだ?」


伊藤「うん」


中村「私たちの組織のことも?」


伊藤「うん、まだ言ってない」


中村「なんか、ウソついてばっかりでイヤになるよね」


伊藤「大丈夫、この気持ちはー」


笑顔の伊藤


伊藤「本当だから」



END










無断転載・無断使用禁止

 

この脚本を使用する場合、必ずご一報ください

 

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短編映画『ぼくの秘密』劇団ぎょう座【第13作】(字幕入り)

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