『きみのとなり』
作・和田昌俊
イラスト・かな
登場人物2名メインキャスト
[時代・舞台設定]近未来(宇宙旅行が現在の海外旅行くらいに身近になった日本)
秋山雅治(あきやま まさはる)
恋人のさくらからは、MASAと呼ばれている。NASAみたいで本人は気に入っている。さくらとは幼馴染。幼少期より仲が良く、いつの間にか付き合っていた。
宇宙に興味があるが年齢的なこともあり、宇宙飛行士訓練課程では毎回選考に落ちている。厳しい訓練のストレスでハゲたことを少し気にしている
毛利さくら(もうり さくら)
幼少期より秋山と共に育った幼馴染で、いつの間にか恋人の関係になっていた。会社では管理職を任されているが、本人は専業主婦になるのが小さい頃からの夢。
子ども好きなため、小さい子を見ると自分も子どもが欲しくなる。卵子凍結を検討しながらも、踏みきれないでいる。高学歴ですごい美人。
そのせいか男性に近寄りがたいと思わせてしまうことがある
※本作において身体的接触少しだけあります(袖や腕を掴む)セリフにセクシュアルな表現はありません。肌の露出はありません。暴力的表現あります(頬にビンタ)喫煙・飲酒シーンはありません
【シーン1 】夜の公園
夜の公園で秋山と毛利が深刻そうな話をしている
毛利「いつ帰ってくるの?」
秋山「わからない。5年か6年くらいだと思う」
毛利「いまじゃなきゃダメなの?」
秋山「チャンスなんだ、欠員が出たから繰上でおれが選ばれたんだよ」
毛利「だからって・・・他の人でもいいじゃん」
秋山「きっともっとこの先は技術が進歩して、5年じゃなくて5日間とか、5時間で行って帰ってこれるようになるかもしれないよ」
毛利「そのころには、私、おばあちゃんだよ」
秋山「それでもおれは愛してるよ」
毛利「バカ」
秋山「ゴメン」
毛利「私、もうじゅうぶん待ったでしょ」
秋山「わかってる。だからこれ以上待っててくれとは言えない。でも必ず帰るから」
毛利「バカ」
秋山「ゴメン」
毛利「この3年間ずっと訓練ばっかりでほとんど会えなくってさ」
秋山「ゴメン」
毛利「選考に落ちたってきいて、正直ホッとしてたのに」
秋山「ゴメン」
毛利「これ以上待てないよ」
秋山「ゴメン」
毛利「私が他の人と結婚しちゃってもいいの?」
秋山「ゴメン」
毛利「私、お嫁さんになるのが小さい頃からの夢だって知ってるでしょ」
秋山「・・・おれの小さい頃からの夢も知ってるだろ」
毛利「メールもできないし電話もできないって、そんなの私、きっと耐えられない」
秋山「寂しくなったら夜空を見上げれば、いつでもおれが見えるよ」
毛利「見えるわけないじゃん。そんな遠くに行って研究しなきゃいけないことなんて、私にはわからない」
秋山「結婚と夢、どちらか一つを選べって言うのか?」
毛利「そんなこと言ってないじゃん」
秋山「じゃあどうすりゃいいんだよ」
毛利「わかんないよ」
しばらくの沈黙
毛利「ゴメン、今日は一緒にいられるの?」
秋山「いや、もうそろそろ戻らないと、門限があるから」
毛利「まるで子どもみたい」
秋山「子どもの頃から憧れてたんだけどな」
毛利「宇宙なんて大っ嫌い」
秋山「そうだよな」
毛利「訓練も規則も、みんなみんな大っ嫌い」
立ち上がる毛利
秋山「待てよ、まだ少し時間があるから、これ」
秋山は指輪ケースを取り出して、開いて毛利に見せる
毛利は指輪ケースを見ると、一瞬ためらったあと
毛利「大っ嫌い!」
毛利は指輪ケースごと秋山の手をはねのける
転がる指輪ケース
立ち去る毛利とそれを追いかける秋山
秋山「待てよ、ちょっと待てって」
秋山は毛利の袖や腕を掴むが、それを振り払ってなおズンズンと歩いていく毛利
何度か振り払うと、振り返って秋山を見つめ、秋山の頬を叩く毛利
秋山は無言で毛利を見つめたあと、静かに土下座する
こぶしをギュッと握りしめて立ち去る毛利
顔を上げて、立ち去った毛利を見つめる秋山
暗転
エンディングロール
エンディング終わり
夜の公園(シーン1より長い月日が経過している)
毛利は一人ベンチに座っている
となりには一人分のスペースが空いている
リングをはめた薬指を少し触る毛利
夜空を見上げる毛利
暗転
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